インドにてリス類の国際会議が開催されました!〜第3報
インドからカナダへ:リス見聞記−3

アメリカアカリス
 Kamloopsの街を囲む丘陵の松林には、アメリカアカリスTamiasciurus hudsonicusがいたるところに出没し 、甲高い声を上げている。

  アメリカアカリスは山沿いの人家周辺ではごく普通に見ることができる。このリスは松ぼっくりを貯蔵庫に集めて積み上げる。貯蔵庫は代々使われるようで、山のような松ぼっくりの鱗片が積み上げられている(写真↑)。アメリカアカリスが目撃されるのは樹上が多いが、巣を地上に持ち、冬眠はせず、冬は貯蔵庫の中に潜り込んで過ごすという。

キバラマーモット
 山へは「熊が出るから一人で行っちゃいけない」とのKarl先生のお達しがあり、手伝いの学生さんとトラックの都合のつかない時には近くのWildlife Parkへ行くことにした。この公園に、勝手に住み込んでいるキマツシマリスとキバラマーモットMarmota flaviventrisが目的。丁度、シマリスの子供が巣から外出を始めたところで、母と複数の(おそらく6頭の)子供たちが走り回り、その間をキバラマーモットが行ったり来たりするという夢のような光景を見ることができた。Kamloopsはこのマーモットが最も良く観察できる場所のようで、山沿いの民家の庭や山の斜面を走り回る姿がごく普通に見られる。市内のゴルフ場はマーモット“だらけ”だそうだ(写真↓)。  

        

                                    
    

キマツシマリス
 呆れたことに、キマツシマリスの子供は人間だったら頭がくらくらしてくるほどの強烈な日差しの下で、石の上で日光浴をしていた(写真↓)。北海道のエゾシマリスに比べると鼻面が長いようだ(写真↓)。

         

 エゾシマリスでも観察したように、母子は巣内で集合し、母親は巣内で乳などの食物を子供に与えているようだった。巣の引っ越しもするのか、母親が巣に入ってすぐに出てくると(おそらく給餌せずに)、後から5頭の子供が母の後から一斉に飛び出してきた。行く先を見極めようとしたが、近くでうろついていた他のシマリスが紛れ込み、母子の列が乱れて、引っ越しは上手く行かなかったようだ。

 北海道のエゾシマリスと違って、子供たちは2−3頭で連れ立ち行動をするし、巣穴の近くでうろうろしているから母子もしばしば出会う。かなり「ゆるい集団行動」をしているように見える。2時間ほど、シマリスの多い場所でみていると巣が簡単に見つかった。子育て中の巣場所近くへ行くと、確かに「plenty of plenty」のシマリスがいるという印象を受ける。しかし、文献によると、キマツシマリスは1メスが約1haの行動圏をもち、かなりスペースアウトするようだから、それほど高密度にはならないのかもしれない。

 エゾシマリスと比べてとにかく行動が素早い。巣穴から飛び出してきた子供達は岩の上を跳ねるように走り、その姿を追跡するのはなかなかに難しい。走るのが速いことと、よく鳴く(鳥のさえずりのよう)ことが大きく異なる。一頭が警戒の声を上げると、近くにいた個体は一斉に警戒態勢に入るから、開けた場所を好むキマツシマリスにとって、ゆるい集団行動は、監視の目を増やすという意味で重要なのかもしれない。もう一つ印象的だったのは、ほお袋をあまり膨らせないことだ。この時期の食べ物が主に細かい草の種子なので、いっぱいにならないのかもしれないが、ほお袋の利用の仕方に差があるのだろうか。子供の日令は分からないが、一見したところ、母との区別ができないくらい成長していた。

インドの国際リス会議は思いがけない、カナダでのシマリスとの出会いをもたらしてくれた。これまで調査してきたTamias sibiricusの亜種エゾシマリスとチョウセンシマリスとは別の大陸で種分化してきたシマリスを比較研究することで、進化の謎に少しでも迫れるかとわくわくした気持ちでいる。


3年後のKamloopsでのリス会議では、多種のリス類、シマリス類、ジリス類やアメリカモモンガ観察会が企画されています。お楽しみに。カナダでのシマリス調査にあたってお世話いただいたKarl Larsen先生をはじめ、Mariko Shirato, Dustin, Veronika, Jarrett, CindyさんなどThompson Rivers Universityの学生さんたちにお世話になりました。感謝します。

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